運命の赤い糸で結ばれた、奇跡のラブストーリー「めぐり逢えたら」。
トム・ハンクスとメグ・ライアンの素敵なコンビが織りなす,愛のストーリーを紹介します。
概評
1993年に公開された『めぐり逢えたら』(原題:Sleepless in Seattle)は、トム・ハンクスとメグ・ライアンという、90年代を代表するラブコメのゴールデンコンビが再び共演を果たした傑作だ。古典的なハリウッド映画へのオマージュを散りばめながら、ラジオというアナログな媒体を通して心を通わせる男女の姿を、ロマンティックかつユーモアたっぷりに描き出している。
インターネットもSNSもない時代だからこそ、手紙や声といった手段を通して、見知らぬ誰かと心を通わせる純粋なロマンスが、観客の心を掴んで離さない。脚本家であり、監督も務めたノーラ・エフロンの巧みな語り口と、主演二人の愛らしい演技が相まって、公開から30年以上経った今もなお、多くの人々に愛され続けている不朽の名作である。
あらすじ
シアトルに住む建築家のサム・ボールドウィン(トム・ハンクス)は、妻を亡くした悲しみから立ち直れずにいた。そんな彼を心配した幼い息子ジョナ(ロス・マリンジャー)は、クリスマスの夜、ラジオの人生相談番組に電話をかけ、父親のために新しい母親を見つけてほしいと懇願する。
ジョナの願いを聞いたサムは、渋々ながらも電話口で妻への深い愛情と、彼女を失った寂しさを語り始める。その声は全米中に響き渡り、多くの女性たちの涙を誘った。サムは「シアトルの眠れない男」として一躍有名になる。
一方、ボルチモアに住む新聞記者アニー・リード(メグ・ライアン)は、婚約者(ビル・プルマン)がいながらも、どこか満たされない日々を送っていた。そんな彼女は偶然ラジオでサムの声を聞き、胸を締め付けられる。アニーは、まるで映画『めぐり逢い』(An Affair to Remember)のように、サムに運命的なものを感じ、彼に会いたいと強く願うようになる。
アニーは意を決してサムに手紙を書き、エンパイア・ステート・ビルの展望台でバレンタインデーに会うことを提案する。しかし、二人の間には、距離や、それぞれの抱える事情が立ちはだかる。果たして、二人は運命に導かれてめぐり逢うことができるのか。
見どころ
1. トム・ハンクスとメグ・ライアンの絶妙なコンビネーション
『恋人たちの予感』に続く、トム・ハンクスとメグ・ライアンの再共演。本作では、二人が直接顔を合わせるシーンはほとんどない。しかし、その距離感が逆に、お互いの声や手紙を通して心を通わせていく様子を、よりロマンティックに描き出している。ユーモアと優しさを持ち合わせたトム・ハンクスと、キュートでチャーミングなメグ・ライアンの演技は、観客を自然と二人の恋を応援する気持ちにさせてくれる。
2. ラジオというアナログな媒体が紡ぐロマンス
本作の重要なモチーフであるラジオは、現代のSNSとは異なり、顔が見えないからこそ、相手の声や言葉に集中して、心を深く理解しようとする純粋なコミュニケーションを可能にしている。見ず知らずの相手に心を寄せるという、古典的なロマンスの魅力を、アナログな手法で現代に蘇らせている。
3. 名作映画へのオマージュ
本作は、ケイリー・グラントとデボラ・カー主演の古典的なラブストーリー『めぐり逢い』(1957年)に、度々言及している。映画の中で、アニーの友人が「人生は『めぐり逢い』みたいにはいかないわ」と言うように、本作は『めぐり逢い』を物語の軸に据えながら、現代的な視点も交え、独自のラブストーリーを紡いでいる。ラストの展開は、まさに『めぐり逢い』への感動的なオマージュであり、映画ファンにはたまらない演出だ。
4. シアトルとニューヨークの美しい街並み
シアトルの水辺の家や、ニューヨークの象徴であるエンパイア・ステート・ビルなど、美しいロケーションも本作の大きな魅力だ。特に、クライマックスのエンパイア・ステート・ビルの展望台のシーンは、ロマンティックなムードを最高潮に盛り上げ、観客の心に深く刻まれるだろう。

出演者
- サム・ボールドウィン: トム・ハンクス
- アニー・リード: メグ・ライアン
- ジョナ・ボールドウィン: ロス・マリンジャー
- ウォルター: ビル・プルマン
- ジェイ・ジーゲル: ロブ・ライナー
- ヴィッキー: ロージー・オドネル
スタッフ
- 監督: ノーラ・エフロン
- 脚本: ノーラ・エフロン、デヴィッド・S・ウォード、ジェフ・アーチ
- 製作: ゲイリー・フォスター
- 撮影: スヴェン・ニクヴィスト
- 音楽: マーク・シャイマン
むすび
『めぐり逢えたら』は、ただのラブコメディではない。運命の赤い糸を信じる純粋な心と、それに導かれていく奇跡的なめぐり逢いを描いた、時代を超えて愛されるべき傑作だ。トム・ハンクスとメグ・ライアンの相性の良さはもちろん、ロマンティックなストーリー、心温まるユーモア、そして美しい映像が、観る者の心を優しく包み込んでくれる。
デジタル化が進み、人と人との繋がりが希薄になりがちな現代だからこそ、本作が描くアナログな温かさが、より一層心に響く。大切な人と一緒に観るのはもちろん、一人でじっくりと、この心温まるロマンスに浸るのもお勧めだ。映画史に残る、珠玉のラブストーリーを、ぜひあなたの目で確かめてほしい。

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