「微笑みの女王」として日本のゴルフファンに深く愛されている申ジエ選手。
日本ツアーの生涯獲得賞金ランキングで歴代1位に君臨し、永久シード獲得まで「あと1勝」という歴史的な瞬間に私たちは立ち会っています。しかし、その輝かしい実績の裏側には、想像を絶する過酷な過去があったことをご存知でしょうか。
中学時代に経験した最愛の母との別れ、家族を襲った悲劇、そして母が命と引き換えに残した保険金……。
「このお金で、絶対にプロとして成功する」
そう誓った少女は、いかにして世界ランク1位まで登り詰め、なぜ今もなお寄付を続け、笑顔で戦い続けることができるのか。
本記事では、申ジエ選手の驚異的な生涯獲得賞金の総額から、彼女の精神を支える壮絶な生い立ち、そして誰もが心を打たれるその人柄まで、レジェンドの全貌に迫ります。
これを読めば、彼女の放つ一打が、なぜあんなにも力強く、そして優しいのか、その理由が見えてくるはずです。
国内ツアー・女子プロ 生涯獲得賞金ランキング
女子は、近年賞金額が上がっていることもあり、現役選手や2000年代以降に活躍した選手が多くランクインしています。
| 順位 | 選手名 | 概算獲得賞金 |
| 1 | 申 ジエ | 約 14億5,963万円 |
| 2 | 不動 裕理 | 約 13億7,262万円 |
| 3 | 全 美貞 | 約 13億5,298万円 |
| 4 | 李 知姫 | 約 12億5,661万円 |
| 5 | 鈴木 愛 | 約 11億 561万円 |
| 6 | アン ソンジュ | 約 11億 067万円 |
| 7 | 上田 桃子 | 約 10億9,476万円 |
| 8 | 横峯 さくら | 約 10億8,387万円 |
| 9 | 大山 志保 | 約 9億7,490万円 |
| 10 | 福嶋 晃子 | 約 9億 908万円 |

申ジエ選手が不動侑里選手を抜いて
日本でもナンバー1に
申ジエ選手の全世界での獲得賞金は
申ジエ選手は、日本での活動に専念する前、米LPGAツアーでも「世界ランキング1位」を経験するほどの輝かしい実績を残しています。
日本ツアー(JLPGA)および全世界での合計額をまとめました。
彼女は「世界4大ツアー」すべてで優勝経験があり、その稼ぎもワールドクラスです。
申ジエ選手のキャリア全体での獲得賞金は、日本円に換算すると約32億円〜35億円に達すると推測されます。
| 所属ツアー | 概算獲得賞金(米ドル/日本円) | 備考 |
| 日本 (JLPGA) | 約 1,000万ドル (約14.6億円) | 日本ツアー歴代1位(2025年現在) |
| 米国 (LPGA) | 約 617万ドル (約9.2億円) | 元世界ランク1位、賞金女王(2009) |
| 韓国 (KLPGA) | 約 400万ドル以上 (約6.0億円〜) | 国内21勝、3年連続賞金女王 |
| 欧州 (LET)・他 | 約 150万ドル以上 (約2.2億円〜) | 全英女子2勝、豪州、欧州ツアーなど |
| 合計(概算) | 約 2,167万ドル〜 (約 32.5億円〜) |
注記: 通算優勝回数は世界合計で66勝(2025年時点)。米ドルから日本円への換算は、近年の平均的な相場(1ドル=150円前後)に基づいています。
驚異的なキャリアの背景
申ジエ選手が「世界で最も稼ぐ女子ゴルファー」の一人である理由は、その圧倒的な「勝率」にあります。
- 米ツアーでの無双時代: 2009年に米ツアーに参戦すると、いきなり賞金女王と新人王を同時に獲得しました。
- 韓国でのレジェンド: 韓国ツアー時代には年間10勝(2007年)という驚異的な記録を立て、若くして多額の賞金を積み上げました。
- 日本での安定感: 2014年から日本に主戦場を移して以降も、ほぼ毎年1億円前後を稼ぎ続け、ついに不動裕理選手を抜いて日本女子ゴルフ史上最高額の記録を樹立しました。
日本人選手との比較
世界合算の約32億円という数字は、先ほど挙げた日本人女子1位の畑岡奈紗選手(約21億円)をも大きく上回る、アジア女子ゴルフ界の金字塔と言えます。
申ジエ選手のプロフィール
申ジエ選手が「世界ランク1位」や「日本ツアー歴代1位」にまで登り詰めた背景には、想像を絶する困難と、それを乗り越えるための凄まじい練習量がありました。
彼女のプロ入りまでの歩みと、その驚異的な努力についてご紹介します。
1. 家族を襲った悲劇と「命のお金」
申ジエ選手が中学3年生(16歳)の時、練習中に「母と弟、妹が交通事故に遭った」という知らせが入ります。母親は帰らぬ人となり、弟と妹も重傷を負って1年近く入院生活を送ることになりました。
- 絶望の中での決意: 経済的に苦しかった一家に残されたのは、亡くなった母親の生命保険金でした。
- 父の言葉: 「これはお母さんが命と引き換えに残してくれたお金だ。これで一生懸命ゴルフをしよう」という父の言葉を受け、彼女は「母のために、そして家族を養うために、絶対にプロとして成功する」と心に誓いました。
2. 凄まじい練習ぶり
彼女は「努力のアイコン」と呼ばれるほど、周囲が驚くような練習を課してきました。
- 階段駆け上がり特訓: 下半身を鍛えるため、当時住んでいたアパートの15階まで、1日に7回以上も階段で往復していました。
- 1日10時間以上の猛練習: プロ転向後も変わらず、オフシーズンには朝6時から夜9時まで、食事以外のすべての時間を練習に費やすというスケジュールをこなしています。
- ミスの許されない精神: 以前は「ミスも経験」と考えていたそうですが、母の死後は「この1回のミスが一生の後悔になる」と考え、一打に対する集中力を極限まで高める訓練を積みました。
3. 「ファイナル・ラウンド・クイーン」への成長
こうした過酷な経験と練習が、彼女の代名詞である「ファイナル・ラウンド・クイーン(最終日の女王)」という勝負強さを生みました。
- 入院生活中の看病: 弟と妹の看病のため、病院に寝泊まりしながら練習場へ通う日々を1年近く続けました。この時期に培われた精神力が、接戦での驚異的な粘りにつながっています。
- 圧倒的な結果: 2005年に高校生アマチュアとして韓国ツアーで優勝し、その直後にプロ転向。翌年には新人王と賞金女王を同時に獲得するという、彗星のごときデビューを飾りました。


素晴らしい精神力と魅力的な性格
申ジエ選手が、壮絶な過去を背負いながらも常に穏やかで明るい笑顔を絶やさない理由は、彼女の「精神的な成熟度」と「感謝の哲学」にあります。
ゴルフ界ではその人柄の良さから「微笑みの女王」や「ファイナルラウンド・クイーン(最終日の女王)」と呼ばれますが、彼女の性格を表す特徴的なエピソードをいくつかご紹介します。
1. 悲しみを「強さ」と「慈愛」に変える力
彼女は自分の苦労を、他人を攻撃したり卑下したりする材料にはしません。むしろ、「苦しい経験があったからこそ、今こうしてゴルフができることが幸せ」と考えるポジティブな思考を持っています。
- 「スマイル」は意識的な選択: 彼女はあえて笑顔でいることを心がけています。それは、自分が暗い顔をしていれば亡き母が悲しむ、そして周囲の人も暗くなってしまうと考えているからです。
2. 驚異的な「利他の精神」(チャリティ活動)
彼女の性格を最もよく表しているのが、継続的な寄付活動です。
- 自分が苦しい時に助けられた経験から、「お金は必要なところに流れてこそ価値がある」と語っています。
- 韓国や日本での震災支援、難病の子供たちへの支援など、これまでに投じた寄付金は数億円にのぼると言われています。自分のために稼ぐのではなく、「誰かの役に立つために勝つ」という使命感が、彼女の明るさの源泉です。
3. ライバルからも愛される「誠実さ」
勝負の世界に身を置きながら、同伴競技者や後輩に対しても非常に紳士的です。
- 日本語の習得: 日本ツアーに参戦してからは、「日本のファンやメディアと自分の言葉で話したい」と猛勉強し、今では通訳なしで完璧な日本語を話します。その真摯な姿勢が、日本の選手やファンから深く尊敬される理由です。
- 後輩へのアドバイス: 自分の技術を隠すことなく、若手選手に惜しみなく教える姿がよく見られます。
4. 哲学的で冷静な知性
彼女は非常に読書家であり、感情をコントロールする術を知っています。
- 「ゴルフは人生の一部に過ぎない」という広い視点を持っているため、試合で負けても過度に落ち込まず、すぐに前を向くことができます。この「心の余裕」が、あの穏やかな雰囲気を作り出しています。
申ジエ選手の明るさは、単なる楽観主義ではなく、「深い悲しみを知った上で、それでも前向きに生きることを決めた人の強さ」です。
彼女はよく「ゴルフを通じて、人々に希望を与えたい」と言います。その言葉通り、彼女の笑顔は「どんなに辛いことがあっても、努力すれば道は開ける」というメッセージそのものになっているのかもしれません。
彼女のような「苦労を感じさせない明るさ」を持つ選手は、ゴルフ界で稀有な存在と言えます。
彼女の哲学が詰まった「名言」
申ジエ選手がなぜ「聖人」とまで呼ばれ、多くのファンや選手から愛されているのか、彼女の「名言」と「ファンへの神対応」、そしてその「素顔」がわかるエピソードをご紹介します。
彼女の言葉には、過酷な経験を乗り越えた人だけが持つ重みと優しさがあります。
- 「お金は水のようなもの。溜めておくと腐るけれど、流せば人を潤す」
- 寄付活動を続ける理由を聞かれた際の言葉です。自分のためではなく、循環させるために稼ぐという彼女の価値観が凝縮されています。
- 「私にとって一番のライバルは、昨日の自分です」
- 他人と比べるのではなく、常に自己ベストを更新しようとする姿勢が、30代後半になっても衰えない強さの秘訣です。
- 「ゴルフができること自体が、私にとっては奇跡であり、ボーナスタイムなんです」
- 母を亡くし、ゴルフを諦めかけた過去があるからこそ、一打一打を心から楽しむという彼女の明るさの根源です。
伝説的な「ファン・関係者への神対応」
彼女の現場での振る舞いは、日本ツアーの中でも「最高のお手本」と言われています。
- どんな時も足を止めてサイン: たとえその日のスコアが悪く、悔しくてたまらない時でも、待っているファンがいれば必ず笑顔でサインに応じます。それも、一人ひとりと目を合わせ、「ありがとうございます」と声をかけながら丁寧に行うことで有名です。
- ボランティアへの感謝を忘れない: 大会を支える運営ボランティアの人たちに対し、すれ違うたびに挨拶をし、時には個人的に差し入れをしたり、心からの感謝を伝えたりします。彼女の組に付いたボランティアは「みんな申ジエのファンになる」と言われるほどです。
- 日本語での丁寧な受け答え: 彼女はインタビューで決して定型文を言いません。自分の言葉で、その時の感情やコースへの敬意、対戦相手への称賛をしっかりと言葉にします。その知性的で誠実な態度は、多くのスポーツ記者の心も掴んでいます。
実は「お茶目で多趣味」な素顔
ストイックなだけでなく、実はとても親しみやすい一面もあります。
- 趣味は「写真」と「読書」: 遠征先でもカメラを持ち歩き、風景を撮るのが好きだそうです。また、心理学や哲学の本を愛読しており、それが彼女の冷静な判断力の糧になっています。
- 食いしん坊な一面: 日本の食べ物が大好きで、特にお寿司やラーメンなどのグルメを楽しむ様子をSNSなどで見せることもあります。美味しいものを食べてリフレッシュする、等身大の女性としての明るさも魅力です。
- 「ジエちゃん」という愛称: 後輩選手たちからは、その包容力から「ジエさん」と慕われる一方で、日本のファンからは親しみを込めて「ジエちゃん」と呼ばれます。彼女自身もその愛称を気に入っており、ファンとの距離を縮めるきっかけになっています。
悲願の「永久シード」まで、あと1勝
日本女子ツアー(JLPGA)の永久シード権は、通算30勝という極めて高いハードル(過去に6人しか達成していない)です。
- 現在の状況: 申ジエ選手はJLPGAツアー通算29勝。
- 目標まで: あと1勝で、日本人以外では初となる永久シード権を獲得します。
- 彼女の執念: 米ツアー(LPGA)での勝利を合わせるとすでに60勝を超えている彼女ですが、「日本で長くプレーし、日本のファンの前で殿堂入りを果たしたい」という強い願いを持っています。
なぜ「あと1勝」がこれほど注目されているのか?
彼女が次の一勝を挙げれば、以下の歴史的な快挙が達成されます。
- 日本人以外で初のJLPGA永久シード権獲得。
- 不動裕理選手、樋口久子選手、岡本綾子選手といった伝説の日本人プロたちと並ぶ「レジェンド」の仲間入り。
- 30代後半という年齢で、世界の強豪と若手がひしめく日本ツアーを制覇し続ける「鉄人」としての証明。
まとめ:彼女が教えてくれること
申ジエ選手の人生は、「悲しみを力に変え、成功を誰かのために使う」という、一つの完成された生き方のように見えます。
彼女が日本ツアーで優勝すると、会場全体が温かい拍手に包まれるのは、彼女の「スコア」だけでなく、その「生き方」に多くの人が感動しているからに他なりません。
申ジエ選手の30勝目を,こころから期待しましょう!!












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