序文:ふたたび、夢の舞台へ。石川遼の選んだ「茨の道」
2026年、日本のゴルフファンは一つの熱い決断に胸を躍らせています。かつて「ハニカミ王子」として旋風を巻き起こし、若くして海を渡った石川遼が、再びPGAツアー(米レギュラーツアー)への切符を掴むため、過酷な下部ツアー「コーンフェリーツアー」への本格参戦を表明したからです。
開幕戦、第2戦のバハマ2連戦を終え、いよいよ戦いの舞台は中米パナマへ。1月29日から開幕する第3戦「パナマチャンピオンシップ(Panama Championship)」は、石川遼の今シーズンを占う上で極めて重要な一戦となります。
なぜ、国内ツアーで確固たる地位を築いた彼が、あえて移動距離が長く、過酷な環境の米下部ツアーに身を投じるのか。そして、このパナマの地で彼を待ち受ける試練とは何なのか。この記事では、石川遼の現在地と、今大会の注目ポイントを深く掘り下げていきます。
1. コーンフェリーツアーという「サバイバル・ジャングル」
まず、石川が戦っているフィールドについておさらいしておきましょう。コーンフェリーツアーは、世界最高峰のPGAツアーへの唯一と言ってもいい直通ルートです。
- 昇格条件の厳格化:2026年シーズン、PGAツアーへの出場権を得られるのは、年間ポイントランキング「上位20名」のみ。一打の重みが以前にも増しています。
- 若手の台頭と層の厚さ:米国内の大学を卒業したばかりの精鋭や、欧州・アジアの実力者が集結。優勝スコアが20アンダーを超えることも珍しくない「伸ばし合い」の展開が続きます。
石川はこの厳しい舞台で、Qスクール(予選会)を経て出場権を手にしました。34歳という、プロゴルファーとして脂の乗った時期に、あえてルーキーのような泥臭い戦いを選んだのです。
2. 舞台は「クラブ・デ・ゴルフ・デ・パナマ」
第3戦の舞台となるのは、パナマ共和国の名門「クラブ・デ・ゴルフ・デ・パナマ(Club de Golf de Panama)」。このコースには、これまでのバハマ戦とは全く異なる難しさがあります。
高い戦略性が求められる林間コース
バハマの海岸線沿いのリンクスコースとは一変し、パナマは木々に囲まれたタイトなレイアウトが特徴です。
- 狭いフェアウェイ:正確なティーショットが不可欠。
- 独特の芝(バミューダ芝):熱帯特有の粘り強い芝は、アプローチやパッティングの繊細な感覚を狂わせます。
- 風と暑さ:中米特有の突風と湿度の高い暑さは、選手の体力を確実に奪っていきます。
昨年、日本勢の平田憲聖選手がこの地で上位争いを演じた際も、この「粘り強さ」が鍵となりました。石川遼にとっても、日本ツアーで培った「ターゲットを絞るゴルフ」と、近年磨きをかけてきた「低弾道のコントロールショット」が試される場となります。
3. 石川遼の現在地:バハマでの手応えと課題
開幕からの2連戦、石川のプレーには明らかな「進化」が見られました。
進化したスイングと安定感
一時期の迷いが消え、現在は体全体を使った効率的なスイングに定着しています。特にアイアンの精度は高く、バハマ初戦の初日には5バーディー・ノーボギーの「67」をマークするなど、爆発力は健在です。
リシャッフル(出場優先順位の入れ替え)の壁
石川は現在、5月に行われる「リシャッフル」までにポイントを稼ぎ、出場優先順位を上げる必要があります。下位の順位で参戦している彼にとって、欠場者待ちを避けて全試合に出場し続けるためには、序盤戦でのトップ10入りが喉から手が出るほど欲しいところです。

4. パナマ選手権での注目ポイント
① 「ティーショットの精度」が全てを決める
パナマは、ドライバーを振り回せば良いコースではありません。石川が「3番ウッドやアイアンでの刻み」をどう選択し、確実にフェアウェイをキープできるか。かつてのようなアグレッシブ一辺倒ではない、大人のマネジメントが見どころです。
② グリーン周りの魔術師・復活なるか
石川遼の代名詞といえば、驚異的なリカバリー能力。パナマの硬く速いグリーンを外した際、どれだけパーを拾えるか。彼が持つ「感性」が、データ重視の米若手選手たちを凌駕する瞬間を期待せずにはいられません。
③ 大西魁斗との「切磋琢磨」
今季は同じくPGA昇格を目指す大西魁斗選手も参戦しています。練習ラウンドを共にし、情報を共有する仲間の存在は、孤独な米遠征において大きな支えです。日本人二人がリーダーボードの上位に並ぶシーンは、日本のファンにとって最大の楽しみでしょう。
5. 石川遼が語る「今」と「未来」
石川は近年のインタビューで、こう語っています。
「今の自分には、まだ足りないものがある。それを埋めるのは日本ではなく、この(米国の)環境だと思った」
一度は頂点を見て、一度は挫折を味わった。そんな彼が、30代半ばにして見せる「求道者」のような姿。それは、結果以上に私たちに勇気を与えてくれます。パナマでの一打一打は、単なるスコアではなく、彼自身の人生をかけた再証明のプロセスなのです。
結びに代えて:私たちの応援が力になる
パナマとの時差は大きく、日本でライブ視聴するには深夜や早朝の応援となります。しかし、地球の裏側で戦う石川遼にとって、SNSやメディアを通じて届くファンの声は、間違いなく背中を押す風となります。
「石川遼なら、またやってくれる」
そう信じさせる何かが、彼にはあります。1月29日、パナマの地で力強くティーオフする背中に、日本から熱いエールを送りましょう。


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