地球温暖化への警鐘! カール・セーガンの名著「百億の星と千億の生命」 

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現代への警鐘「百億の星と千億の生命」

米国の天文学者でSF作家でもあるカール・セーガンは、骨髄異形成症候群と言う不治の病と闘いながら、62歳で亡くなる直前まで、持てる力を振り絞って、「百億の星と千億の生命」(原題billions and billions)と言う書を著し、巨大数をテーマにした科学論や、政治、文化論とともに、現代に生きる我々に、このままでは美しい大自然、地球の環境が崩壊するとの警鐘をならし続けました。

彼が鳴らした警鐘の最大のテーマが、地球温暖化が与える生態系の変化や、気候変動の影響であり、このブログでは、彼の渾身の著作「百億の星と千億の生命」の中で、地球温暖化にまつわる部分を述べて行きたい。

空に穴が開いている ー オゾン層の崩壊

筆者の、「太陽の恵み」のブログでもオゾンホールの問題を少し述べましたが、カール・セーガンはこの本の第10章で「空に穴が開いている」と題し、電気冷蔵庫などに利用されるフロンの製造・拡散による、オゾンホールの拡大の危機を述べています。

オゾンの化学式はO3で、大気の20%を占める酸素分子O2の異形であり、我々に触れる大気層の中ではフッ素に次いで酸化力が強く、異様な臭気があり人体を害します。
しかし、大気層より外側の成層圏(地上から約10㎞~50㎞ほどの距離の空気層)では、このオゾンが薄い層をなし、降り注ぐ紫外線をシャットアウトしてくれています。

では、仮にオゾン層が無くなり、紫外線が降り注ぐようになると、地上ではどんなことが起こるのだろうか?
カール・セーガンはその脅威を、このように説明しています。

 皮膚の白い白人中心に、皮膚に悪性腫瘍、皮膚癌が激増する。
  人体の免疫機構、すなわち病気と戦う身体の仕組みを傷つける。
 そして、それ以上に深刻な脅威は、人間を含む食物連鎖が崩壊することであると言う。

すなわち
 海に住んでいる生き物で、最も数の多い生き物は、海面近くを浮遊している無数の植物プランクトンである。これらは日光を浴びることで生きており、海中に潜ることはできず、紫外線を浴びて大量死するだろう。
そうなると、植物プランクトンを食べる動物プランクトンが減り、動物プランクトンを食べる小さな甲殻類(オキアミのような小エビ類など)が減り、甲殻類を食べる小さな魚が減り、小さな魚を食べる大きな魚が減り、大きな魚を食べる我々人間に深刻な食糧不足が起こるのだ。

またオゾン層の崩壊により、海面近くの植物プランクトンが減少し、二酸化炭素の消費量が激減することは、イコール二酸化炭素の増加となり、地球温暖化の直接の原因となります。

ただ、ありがたいことに、セーガンらの切実な警鐘のおかげで、国際的にフロンの製造中止運動が起こり、その製造を抑止したモントリオール議定書の発効以来、現在ではオゾンホールの拡大が抑制されてはいます。

地球温暖化の脅威を警鐘

セーガンはさらに第11章で、「待ち伏せ ー 地球温暖化」と題して、二酸化炭素を始め、温室効果ガスの増大による地球温暖化の促進に警告を鳴らしています。
では、我々が住んでいる地球上の、現在の気温はどういうバランスで成り立っているのでしょうか。

先ず太陽の光による温度があります。仮に太陽光が無くなった場合、地球の表面は凍り、大気は個体となって、10メートルもの厚さの窒素と酸素の雪の世界となると言う。
そして地球から宇宙に向かって放出される熱量があります。これは赤外線と呼ばれる長波であり、人体も含め、すべての物体が発する熱量である。よく戦争映画の暗闇の中での戦闘シーンで、赤外線ゴーグルで敵を監視するシーンがあるが、これも人体が弱い長波を発しているから可能となるわけです。

これらの熱量のバランスを単純計算すますと、地球の表面の気温はマイナス20℃くらいになる。しかし、実際には全地球上の平均気温は13℃程度であり、その差がいわゆる温室効果です。

すなわち温室効果がなければ我々人類を含め、ほとんどの生物は存在できないでしょう。しかし、温室効果の行き過ぎも、生存には適さない環境となります。
まことに微妙なバランスとも言えますが、氷河期も含めた地球上の過去の平均気温の差をみると、ここ15万年の間でも5℃程度です。例えば、もっとも寒い2万年前の氷河期にはシカゴは1㎞以上の分厚い氷の下に埋もれていましたが、その時の地球表面の平均気温は今より5℃、低かった。
逆に言えば、平均気温がわずか5℃下がるだけで、地球表面の環境はこれほど変化するということです。

「進む地球温暖化とアメリカ先住民の格言」でも述べましたが、このままだと地球上の平均気温が、今世紀末には3.3℃から5.7℃程度上昇すると予測されています。平均気温が4℃も5℃も変化するとはどれほど大きな変動かが、シカゴの例を見ても分かります。

どのようにして地球温暖化を防ごうか

どうすれば温室効果ガスの増大を防ぎ、地球温暖化を防ぐ、あるいは遅らせることが出来るのか。セーガンは第12章で、待ち伏せから逃れるために、太陽光など自然の力の利用、核廃棄物の出ない核融合発電(日本では茨城県那珂市で開発中)などを解説しています。

球温暖化を防ぐ、絶対的な解決策は未だ見当たりませんが、カール・セーガンが鳴らした警鐘を、現代に生きる我々も引き継ぎ、フロンガスの制限を可能にしたモントリオール議定書のように、有力国家間中心に効力を発する国際取り決めを実現していくことが、もっとも重要で理想の実現に近い方法でしょう。

結びに

残念ながら、今現在も温室効果ガスが増え続けているという現実を直視しつつも、理想に近い実現策は見当たりませんが、これからも科学者・政治家・宗教家、そして我々庶民が声を上げていくことで、人類が奈落に落ちる一歩手前の段階で、環境の決定的な破壊を止めることができるのではと、やや楽観的過ぎるかも知れないが、肯定的な希望を持っています。

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