「陽だまりハウスでマラソンを」のあらすじ
70才を過ぎた主人公パウルが、航空会社の客室乗務員として働いている多忙な娘に促されて、しぶしぶ妻のマーゴとともに老人ホームに入るが、ホームでのお仕着せの人形造りや、合唱させられたりの生活に耐えられない。
パウルはかって1952年のヘルシンキ、1956年のメルボルンのオリンピックで優勝した伝説的なマラソンランナーで、ホームの単調で規則にとらわれる生活に飽き足らず、再び「走ろう」と決意し、次のベルリン国際マラソンで完走しようと計画する。
主人公のパウル・アヴァホフには、ドイツの老・大喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデンが扮し、病弱な妻のマーゴ役のターチャ・サイプトはじめ、老人ホームの個性的な脇役たちも、年相応の面々がコメディ的要素と、感動要素をからめながら、それぞれの役を実にうまくこなしています。
ただ、この映画の中に出てくる1952年と1956年のオリンピックのマラソンであるが、実際には1952年は、かの有名な人間機関車と云われたチェコのザトペック、1956年は仏のアラン・ミムンが優勝しています。
映画のみどころ
すなわち、映画のストーリーは「事実に基づく云々」ではなく、敗戦に打ちひしがれた国民に希望を与え、鼓舞した伝説の英雄のマラソンランナーが、年老いて妻と老人ホームに入居する、という架空のストーリー設定となっています。
しかし、冒頭部分に記録フイルム的な映写のマラソン場面を流したりすることで、あたかも歴史の事実のような物語の背景を演出しているので、正直なところ映画を見終わって、こんな人が居たのだなぁとネットで調べるまで、これは事実に基づく物語だとばかり思っていました。(笑)
ただ、この映画のストーリーが架空の作られたものだと分っても、なぜか全くがっかりはせず、「さもアリなん」「良くぞヤッタァ」との爽快感と言うか、充実感が込み上げてきた次第。
その理由を考えてみると、「人生の終末期を迎えて、人はどのように生きるべきか」という重いテーマを、コミカルな表現を散りばめながらも、登場人物たちのシリアスな演技で、その答えを求めての物語が進んでいくためではないでしょうか。
年老いた人々が、友情やチームワークを大事に、
お互いが支え合いながら、なお成長する姿にも感動を
むすび
このみじかい、解説を読んでいただいたシニア世代の皆さま。そしてもっと若い世代の皆さまにも、ぜひ味わっていただきたいお薦めの佳作映画です。
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