導入:沖縄の「名前」は異世界の扉?
沖縄旅行に出かけた際、カーナビの音声や看板を見て「えっ、これなんて読むの?」と戸惑った経験はありませんか? 「保栄茂(びん)」「勢理客(じっちゃく)」「仲村渠(なかむらぜり)」……。
沖縄の地名や名字は、日本の他の地域とは一線を画す独特の響きを持っています。これらは単に「難しい漢字」というだけでなく、琉球王国時代からの歴史、中国や東南アジアとの交流、そして独自の言語である「しまくとぅば(島言葉)」が深く刻まれた文化遺産そのものです。
この記事では、沖縄の難読地名、名字、そして今では珍しくなった伝統的な名前まで、その読み方と由来を徹底解説します。これを読めば、次の沖縄観光が10倍楽しくなるはずです!
第1章:初見殺しの「難読地名」30選+20選
まずは、地元の人以外はまず読めない「超難読地名」から見ていきましょう。
1. 豊見城市「保栄茂」= びん
日本一難しい地名の一つとして有名です。元々は「ボエモ」に近い音でしたが、変化して「びん」となりました。
2. 浦添市「勢理客」= じっちゃく
「せりきゃく」と読みたくなりますが、正解は「じっちゃく」。他地域からの移住者を指す「セリキャク」が訛ったものと言われています。
3. 北谷町「北谷」= ちゃたん
観光地として有名ですが、初見では「きたや」と読みがち。北を「ちゃ」、谷を「たん」と読む沖縄独特の音です。

4. 南風原町「南風原」= はえばる
沖縄では南風を「はえ」と呼びます。豊作をもたらす恵みの風という意味が込められています。
5. 西表島「西表」= いりおもて
太陽が沈む(入る)方向=西を「いり」と呼びます。逆に東は「あがり」です。
【その他の難読地名リスト】
- 大謝名(おおじゃな):宜野湾市
- 宇茂佐(うむさ):名護市
- 今帰仁(なきじん):世界遺産の城跡がある村
- 奥武島(おうじま):南城市の島
- 平安座(へんざ):海中道路の先
- 金武(きん):米軍基地キャンプハンセンがある町
- 喜屋武(きゃん):本島最南端の岬
- 後原(こしはら):名護市の地名
- 一中前(いっちゅうまえ):那覇市のバス停名
- 饒辺(のへん):うるま市
- 仲順(ちゅんじゅん):北中城村
- 瑞慶覧(ずけらん):米軍キャンプ名にも
- 辺土名(へんとな):国頭村の中心地
- 謝敷(じゃしき):国頭村の美しい集落
- 屋我地(やがじ):名護市の離島
- 漢那(かんな):宜野座村
- 東江(あがりえ):名護市
- 小禄(おろく):那覇空港近く
- 安次嶺(あしみね):旧那覇空港周辺
- 伊覇(いは):八重瀬町
- 高江洲(たかえす):うるま市
- 真壁(まかべ):糸満市
- 城間(ぐすくま):浦添市
- 神山(かみやま):宜野湾市
- 豊見城(とみぐすく):かつての「村」から「市」へ

更にディープな難読の地名を
20か所紹介しよう
1. 中部・南部エリア(歴史的な響きが多い)
沖縄本島の南部や中部には、琉球王国時代からの言葉が色濃く残っています。
| 番号 | 地名 | 読み方 | 豆知識 |
| 1 | 手登根 | てどこん | 南城市の地名。名字としても有名です。 |
| 2 | 一中前 | いっちゅうまえ | 那覇市のバス停名など。首里高校(旧制一中)の前。 |
| 3 | 金良 | かねら | 南風原町の地名。 |
| 4 | 西武門 | にしんじょう | 波上宮の近くの四つ角。 |
| 5 | 安次嶺 | あしみね | 那覇空港周辺の旧地名。 |
| 6 | 伊覇 | いは | 八重瀬町の地名。 |
| 7 | 高江洲 | たかえす | うるま市の地名。 |
| 8 | 奥武山 | おうのやま | 小禄に近い公園・球場のある地名 |
| 9 | 仲順 | ちゅんじゅん | 北中城村。エイサーの曲名でも有名です。 |
| 10 | 瑞慶覧 | ずけらん | 北中城村。米軍キャンプの名前にもなっています。 |
2. 北部・離島エリア(自然や地形に由来)
北部の「やんばる」や離島には、独特の漢字の当て方が見られます。
| 番号 | 地名 | 読み方 | 豆知識 |
| 11 | 辺土名 | へんとな | 国頭村の中心地。 |
| 12 | 謝敷 | じゃしき | 国頭村。読みが濁るのが特徴です。 |
| 13 | 宇良 | うら | 国頭村。「うよし」と読まれることもあります。 |
| 14 | 本部 | もとぶ | 美ら海水族館がある町。 |
| 15 | 今帰仁 | なきじん | 世界遺産の城跡がある村。 |
| 16 | 運天 | うんてん | 今帰仁村にある港の名前。 |
| 17 | 屋我地 | やがじ | 名護市にある島。 |
| 18 | 漢那 | かんな | 宜野座村にある地名。 |
| 19 | 真喜良 | まきら | 石垣島の地名。 |
| 20 | 南風泊 | はえどまり | 糸満市などの港にある名称。 |


第2章:歴史が息づく「沖縄の名字」
沖縄の名字は、明治時代の「平民苗字必称義務令」の際、その土地の地名(領地名)を名字としたものが多いため、地名とセットで覚えるのがコツです。
1. 日本一画数が多い?「仲村渠(なかむらぜり)」
「渠(せり)」は溝や用水路を意味します。村の中を流れる溝の近くに住んでいたことが由来です。
https://maps.app.goo.gl/YCkNJdu2EDcg1Q4c7
2. 「金城」の二つの読み方
沖縄で最も多い名字の一つ「金城」。実は「きんじょう」と「かねしろ」の2つの読み方が共存しています。これは標準語読みと、沖縄の言葉が混ざり合った結果です。
3. 漢字三文字の威厳
「具志堅(ぐしけん)」「我那覇(がなは)」「與那嶺(よなみね)」など、沖縄には三文字名字が非常に多いです。これは、かつての士族が中国風の二文字姓(例:向、麻など)とは別に、日本の地名に合わせた家名を持っていた名残です。
【珍しい・難読名字リスト】
- 喜屋武(きゃん):沖縄を代表する難読姓
- 饒平名(よへな):北部の方に多い
- 目取真(めどるま):独特な響きの三文字
- 大工廻(だくわく):職人由来を思わせる珍名
- 阿波根(あはごん):読谷村などに多い
- 譜久村(ふくむら):おめでたい漢字の組み合わせ
- 平安山(へんざん):島の名前が由来
- 翁長(おなが):政治家にも多い名字
- 宜保(ぎぼ):南部によく見られます
- 真栄田(まえだ):芸人さんの名字としても有名
さらに踏み込み 命名(下の名前)や珍しい名字を
さらに踏み込んで、沖縄の「下の名前(命名)」や「歴史的な人名」、そして非常に珍しい「名字」の追加リストをご紹介します。
沖縄の名前の文化は、琉球王国時代の名残と、戦後のアメリカ統治時代の名残が混ざり合っているのが非常にユニークな点です。
1. 沖縄らしい「下の名前」と読み方
最近のキラキラネームとは異なり、沖縄の自然や文化に基づいた独特の読み方をする名前があります。
| 名前 | 読み方 | 意味・由来 |
| 海星 | かいせい / しーさー | 「しーさー」と読ませるケースが稀にあります。 |
| 美ら | ちゅら | 「美しい」という意味。女の子に多いです。 |
| 太陽 | てぃだ | 沖縄の言葉で太陽を「てぃだ」と言います。 |
| 琉球 | りゅうく | 郷土愛を込めた名前。 |
| 海邦 | かいほう | 沖縄で開催された国体(海邦国体)の時期に流行しました。 |
2. 非常に珍しい「超難読名字」(追加10選)
さらに読み当てるのが難しい名字をピックアップしました。
- 饒平名(よへな)
- 北名城(きたなしろ)
- 大城(おおしろ / おおぐすく) ※「おおぐすく」と読む家系もあります。
- 仲宗根(なかそね)
- 宜保(ぎぼ)
- 翁長(おなが)
- 比嘉(ひが) ※沖縄で最多クラスですが、県外では「ひか」と誤読されます。
- 辺土名(へんとな) ※ISSAさんの本名としても有名。
- 国吉(くによし / くによし) ※「くぬし」と呼ぶ地域もあります。
- 真栄田(まえだ) ※「まえだ」ですが、イントネーションが独特です。
3. 歴史的な人名・俗称(童名:わらびなー)
戦前まで一般的だった、沖縄の伝統的な幼名です。今ではおじいちゃん・おばあちゃんの世代や、伝統芸能(組踊など)の中で見ることができます。
- 思河(うみかわ)
- 真牛(まうし)
- 思亀(うみがめ)
- 嘉那(かな)
- 真鶴(まづる)
- 思戸(うみどぅ)
これらは「長生きするように」「動物のように強く育つように」という願いが込められています。
4. カタカナ混じりの名前(戦後の特徴)
沖縄ならではの歴史的背景として、年配の女性に「カタカナ」の名前が多いという特徴があります。これは戦前の戸籍登録の名残や、呼びやすさを重視した結果です。
- ウシ
- カマド
- ツル
- カナ
5. ニックネーム(俗称)のつき方
沖縄では、名前よりも**「あだ名」**で呼ばれることが非常に多いです。
- 名前の後ろに「〜(ー)」を伸ばす
- 勇(いさむ)→ イサムー
- 恵(めぐみ)→ メグー
- 特定の呼び方
- 「〜ちゃん」ではなく「〜(ー)」と呼び捨て、または「〜小(ぐゎー)」をつけます。
- 例:太郎小(たろうぐゎー)=太郎ちゃん
沖縄の名前は「土地の歴史」そのもの
沖縄の難読な名字や名前は、その家がどこの集落の出身であるかを一目で(一聞きで)表しています。
豆知識:
沖縄で「比嘉(ひが)さん!」と呼ぶと、クラスの半分が振り向くと言われるほど多いですが、実は同じ「比嘉」でも、住んでいる集落(屋号)で細かく区別されています。
第3章:今は失われつつある「童名(わらびなー)」と「屋号」
沖縄には、戸籍上の名前とは別に使われる「もう一つの名前」がありました。
1. 命を繋ぐ「童名(わらびなー)」
戦前まで、沖縄の子供には「カマドゥ(竈)」「ウシ(牛)」「タルー(樽)」といった幼名がつけられていました。 これは「汚い名前にすることで、魔物(マジムン)に連れ去られないようにする」という魔除けの意味や、「たくましく育ってほしい」という願いが込められています。
2. 地元の共通言語「屋号(やごう)」
同じ集落に「金城さん」が30人もいたら、誰が誰だか分かりません。そこで沖縄では「カドゥヌメー(角の家の方)」「ミーヤー(新しい家の方)」といった屋号で呼び合います。現在でもお年寄り同士の会話では、名字よりも屋号が優先されます。
第4章:なぜ沖縄の地名はこんなに読みにくいのか?
その理由は、「しまくとぅば(沖縄語)」の音に、無理やり漢字を当てはめたからです。
- 母音の変化:標準語の「e」が沖縄では「i」に、「o」が「u」に変化します(例:音=おと→うとぅ)。
- 城=ぐすく:城を「じょう」ではなく「ぐすく」と読むのは、聖域や砦を意味する古語だからです。
- 東=あがり、西=いり:太陽が「上がる」と「入る」という自然の摂理に基づいた呼び名がそのまま地名になりました。
第5章:【実用編】難読地名にある「おすすめグルメ&スポット」
難読地名を巡るなら、ぜひ訪れてほしい名店・観光スポットを紹介します。
- 我部祖河(がぶそか)食堂:ソーキそばの名店。名護市我部祖河に本店。那覇市内にも数店あります。
- 奥武(おう)島の天ぷら:南城市。中本天ぷら店や大城天ぷら店が有名。
- 今帰仁(なきじん)城跡:世界遺産。寒緋桜の名所でもあります。
- 万座毛:恩納村にある絶景スポット
まとめ:沖縄の名前を知ることは、沖縄を愛すること
沖縄の難読地名や名字は、単なるクイズのネタではありません。それは、激動の歴史を生き抜いてきたウチナーンチュ(沖縄の人々)が、自分たちのアイデンティティを漢字の中に滑り込ませた「知恵の結晶」なのです。
次に沖縄を訪れる際は、看板の漢字一つひとつに注目してみてください。そこには、数百年続く物語が隠されています。

















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