瀬戸内海に浮かぶ小さな島「レモン島🍋」に在る、ホスピスの名前は「ライオンの家」🦁
この名前はホスピス「ライオンの家」を運営する、素晴らしい理念を持つ初老の女性「マドンナ」が、この園を終の住処と定めた人々に「ライオンは百獣の王。もう、敵に襲われる心配がない。安心して、食べたり寝たりすればいい。」と言う気持ちになっていただけるようにとの思いで付けた名前です。
主人公は33才という若すぎる身で癌に侵され、余命幾許もない運命の女性、海野雫(うみのしずく)。
物語は、マドンナからの心温まる手紙を受け取った主人公のしずくが、連絡船でレモン島に着く場面から始まります。
埠頭には真っ白なエプロン姿のマドンナが出迎えてくれており、彼女が運転するカーゴバイクでライオンの家🦁に。
雫は入園するとさっそく、以前の住人から遺された白い犬「六花(ロッカ)」と大の仲良しに。

「六花」とは雪の結晶が六角形であることから付けられた
雪の別称です
園では様々な人生を歩んで来た、余命わずかな人々が新しい住人の雫と心を通わせます。
台湾生まれのタケオさん。認知症になるまでは修道女だったシスター。栗(クリ)と読み間違えやすい「粟鳥洲(アワトリス)」とふざけた名前を自称する、元はクソ真面目だった公務員。至福の味の珈琲を淹れてくれるマスター。昔の栄光が忘れられない人気作詞家先生。姉妹で園に住む狩野姉妹のシマさんなど。
ライオンの家では、毎週日曜日の午後3時からお茶会が開かれます。
お茶会では毎回、ゲストの一人の希望に沿える形で思い出のおやつが出されます。余命いくばくもないこれらのゲストそれぞれの、おやつにまつわる物語が読む者の胸を打ちます。
とりわけ筆者にはシマさんの、
「生まれるのも死ぬのも自分ではきめられないもの。だから、死ぬまでは生きるしかないんだよ。」
と言う言葉が心に響きました。
そして、島の荒廃した蜜柑ばたけを葡萄園に替え、瀬戸内のワインづくりを目指しているナイスガイ、タヒチ君への短くも情熱的な恋心。
主人公の雫(しずく)には、父と呼び慕っている叔父さんがいます。雫の実の両親は雫が幼いころ氾濫する河川の事故で亡くなり、母親の双子の弟が雫を引き取って実の父親のように、いや実の親以上に慈しみ、育ててくれました。
その父から意中の人と結婚したいと告げられたとき、ショックの余り離れて暮らすことに===
これらの切なくも美しい物語が、作者の小川糸さんの軽妙な筆致で凝縮され、描かれているこの小説は、主人公が33才という若さにも関わらず、私たち高齢者の琴線にも触れて来ます。




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