小柄で型破りの警察署長・ジャン₌バチスト・アダムスベルグ警視が登場する,フレッド・ヴァルガスの傑作ミステリーシリーズ「青チョークの男」そして「裏返しの男」の二編。
文庫本出版元は二冊とも「創元推理文庫」です
アダムスベルグ警視をはじめ,実に個性あふれる人間模様のなかで引き起こされる難事件の数々。
理詰めではなく,さりとて闇雲(やみくも)でもなく,事件が解決すれば我々読者も「なるほど,そう言うことか」と納得させられる手法は,さすがミステリーの女王と納得させられるシリーズです。


「青チョークの男」登場人物と読みどころ
アダムスベルグ警視シリーズの初編,「青チョークの男」(原題 L’HOMME AUX CERCLES BLEUS)のおもな登場人物は,
ジャン₌バチスト・アダムスベルグ警視 パリ第5区警察署長 ピレーネの山岳地帯で生まれ育ったのち,警察官となり数々の手柄でパリの所長に抜擢された 小柄でかなり個性的な性格の45才
アドリアン・ダングラール アダムスベルグのもっとも信頼する部下 長身で大酒飲みだが腕は立つ 妻に駆け落ちされ,妻の連れ子を含め5人の子供を抱えている
マチルド・フェレスチエ 美人の海洋生物学者 アダムスベルグより年長
シャルル・レイエール 事故により盲目となった美青年 マチルドのアパルトメントに下宿する
クレマンス・ヴァルモン おなじく下宿人で,マチルドの下働きをする老女
ルネ・ヴェルコール₌ロリー 精神医学者
マドレーヌ・シャトラン 第一の被害者・女性
ジェラール・ポンチュウ 引退した老医師・男性 第二の被害者
デルフィーヌ・ル・ネルモー 第三の被害者・女性
オーギュスタン₌ルイ。ル・ネルモー 6世紀ビザンチン帝国専門の歴史学者 デルフィーヌの夫
カミーユ 美貌の音楽家 アダムスベルグの元恋人
夜のパリの歩道に,青チョークで大きな円を描く不審人物があらわれ,その円のなかには必ず,何らかの物が置かれている。
最初は単なるいたずらかと思われていたが,ある夜に突然,円の中に女性の死体が・・・ しかも,連続して殺人事件が起こる・・・
この奇妙とさえ言える事態に立ち向かう,新任のアダムスベルぐ警視と署員たち。
作者フレッド・ヴァルガスの軽妙な筆の運びが,われわれ読者を事件の渦中に引き込んでいく魅力のミステリーです。

「裏返しの男」登場人物と読みどころ
続いてアダムスベルグ警視シリーズの2作目「裏返しの男」(原題 L’HOMME A L’ENVERS)には,次のような人物が登場します。
アダムスベルグ警視 上述
カミーユ 上述
ローレンス・ドナルド・ジョンストン カナダ人 グリズリーと狼の研究家 カミーユの恋人
アドリアン・ラングラール 上述
シュザンヌ・ジョスラン サン・ヴィクトール村の牧場主 女性
ソリマン・メルキヨール・サンバ・ディアワラ シュザンヌに拾われ育てられた黒人青年
フィリベール・フジュレー(通称 ハリバン) 同じくサン・ヴィクトール村の老羊飼い
オーギュスト・マサール 元椅子職人の食肉処理業者 サン・ヴィクトール村の住人
サブリナ・モンジュ パリでアダムスベルグ警視の命を狙う女
舞台は仏・アルプスのサン・ヴィクトール村からはじまる。今回は,アダムスベルグ警視の元恋人のカミーユが中心となって,物語が前に進んでいく。
村人の大きな財産,羊たちが巨大な狼にかみ殺される事件が発生。人里離れた山で暮らす男があやしいと主張した,牧場主のシュザンヌが殺される事態となり,カミーユたちが犯人を追いかける展開に・・・
今回の物語にアダムスベルグ警視は,カミーユたちの追跡劇の途中から参加をするが,やはり警視ならではのするどい推理を発揮していく・・・
カナダ人ローレンスとの恋愛,アダムスベルグの葛藤,アダムスベルグの危機などを織り交ぜ,この作品でもフレッド・ヴァルガスの秀逸のストーリー展開が堪能できます。


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