土俵の名脇役「行司」のすべて。歴史や職務、驚きの生活環境とは?

私たちがテレビで大相撲を観戦するとき、なくてはならない存在のひとつが「行事(ぎょうじ)」さんですね。

今回は、大相撲において重要な役割を果たす、行司の立つ歴史と位置づけ、多角的な職務と生活などについて詳しく解説します。

Table of Contents

「行事(ぎょうじ)」の役割は?

行司は土俵上での勝負判定や神事の進行を司るだけでなく、番付表の執筆や事務作業といった協会の運営を支えるエリートビジネスマンとしての側面も持っています。

職位は厳格な階級制度によって管理されており、昇進に応じて装束や履物などの格付けが細かく変化するのが特徴です。

また、一人ひとりの行事は、特定の相撲部屋に所属して師弟関係の中で技術を継承し、巡業の設営や部屋のマネジメントも兼務します。

歴代の名行司による功績や伝統的な所作、切腹の覚悟を示す帯刀の習わしなど、その存在は相撲文化の継承に不可欠なものですね。

厳格な定員と階級制度

行司の世界には、最高45名という厳格な定員が定められています。

  • 昇進のステップ: 幕下格以下から始まり、十両格、幕内格、三役格へと昇進していきます。
  • 序列の重視: 行司の世界は力士以上に厳格な階級社会であり、基本的にはこの序列に従って上位の席が空いた際に昇進が決まります。

立行司への選出

立行司は行司の最高峰であり、「木村庄之助」と「式守伊之助」の二大名跡を継承した者のみがその地位に就けます。

  • 最高位への到達: 三役格までの長いキャリアの中で、勝負判定の正確さ、土俵上での立ち振る舞い、神事の進行能力、さらには事務能力などが総合的に評価され、最高峰の二大名跡を引き継ぐにふさわしいと認められた者が選ばれます。
  • 名誉職としての庄之助: 特に木村庄之助は、結びの一番のみを裁く「名誉職」としての側面も持つ、行司の頂点です。

入門制限: 新規採用は義務教育を修了した19歳までの男子とされています。               定年制: 行司には65歳という定年があり、立行司が定年で退職することで、下の階級から順次昇進が行われる仕組みになっています。                                      選考主体: 実際の昇進や名跡の継承は、日本相撲協会の理事会などの承認を経て決定されます。

歴史的な背景と短刀

行司は「神事」としての相撲を司る重要な役割であり、特に結びの一番などを裁く立行司には、力士の勝負を絶対的な公平さで判定する義務があります,。そのため、命を懸けて判定に臨むという武士道にも似た精神が、現代でもこの「帯刀」という形で引き継がれています。

実際には、判定が覆った(差し違えがあった)からといって実際に切腹することはありませんが、立行司が判定を誤った場合には、その責任を重く受け止め、進退伺(しんたいうかがい)を日本相撲協会へ提出するのが慣例となっています。

このように、あの小さな短刀は、土俵上における最高権威の証明であると同時に、極めて重い精神的な重圧の象徴でもあるのです。

特別な持ち物(帯刀)

最高位の木村庄之助式守伊之助(立行司)のみに許される特別な装飾として「帯刀(たいとう)」があります。 これは護身用の短刀を腰に差すもので、「もし判定を誤ったら切腹する」という並々ならぬ覚悟と責任を示す伝統的な格式です。

この短刀には、大相撲の長い伝統に基づいた非常に重い意味が込められています。

1. 短刀が持つ意味と覚悟

この短刀は、単なる飾りや護身用ではありません。最高位の行司として土俵に上がる際、「もし判定を誤るようなことがあれば、この短刀で切腹して責任を取る」という不退転の覚悟と責任の重さを示す象徴です。

2. 帯刀が許される階級

すべての行司が持てるわけではなく、行司の序列における最高位の二名、すなわち「立行司」のみに許される格式です,。

式守伊之助(庄之助に次ぐ第2位)

木村庄之助(行司の最高峰・名誉職)

行司の階級ごとの装束の違い

大相撲の行司は、力士と同様に厳格な階級社会となっており、その階級(格)によって装束の細部、特に房や紐の色、足元、小物の有無が明確に定められています

階級ごとの装束の主な違いは以下の通りです。

1. 房や紐の色(格付けの象徴)

行司が持つ軍配に付いている房(ふさ)や、装束の胸元などの紐の色で階級が分かります。

  • 木村庄之助(最高位): 紫一色
  • 式守伊之助(第2位): 紫と白
  • 三役格: 朱(あか)一色
  • 幕内格: 紅白
  • 十両格: 青(緑)と白
  • 幕下格以下: 青(緑)または黒一色

2. 足元の違い(履物の許可)

土俵上での足元を見ることでも、その行司の階級を判断することができます。

  • 幕内格以上: 草履(ぞうり)を履くことが許されます。
  • 十両格: 足袋(たび)の着用までが許されています。
  • 幕下格以下: 裸足(はだし)で土俵に上がります。

木村家と式守家

行司の二大家である木村家と式守家では、伝統的に軍配の持ち方(構え方)に明確な違いがあります。

  • 木村家: 軍配を握る際、手のひらを下に向けて持ちます。これを「陰(いん)」の構えと呼びます。
  • 式守家: 軍配を握る際、手のひらを上に向けて持ちます。これを「陽(よう)」の構えと呼びます。

歴史的にはこのような細かな所作の違いがありましたが、現代においては、これらの姓は主に最高峰の二大名跡である「木村庄之助」や「式守伊之助」として引き継がれています。

土俵上の行司がどちらの家系かを知るヒントになりますので、軍配を構える際の手元にも注目してみると、より深く観戦を楽しむことができるでしょう。

最高位「木村庄之助」への到達

最高位である木村庄之助は、結びの一番のみを裁く特別な地位です。多くの場合、第2位の式守伊之助として実績を積んだ者が、前任の庄之助の退職に伴ってその名跡を継承し、昇進します。

このように、行司の昇進は「定年による引退」が大きな転換点となり、長年の修行と実績を積み重ねた者が、限られた45名の枠の中で一歩ずつ頂点を目指す仕組みになっています。

行事が担う「相撲文字(根岸流)」

相撲文字は、大相撲の伝統を支える独特の書体であり、行司が担う非常に重要な専門技能の一つです。

1. 相撲文字(根岸流)の特徴と役割

  • 独特の書体: 「根岸流」と呼ばれるこの書体は、「独特の力強い書体」であることが特徴です。
  • 番付表の執筆: 本場所ごとに発行される巨大な「番付表」は、すべて行司の手によってこの書体で書き上げられます。これは非常に高い技術を要する作業です。
  • 視覚的な伝統: 土俵上の判定だけでなく、この美しい相撲文字もまた、大相撲の魅力を形作る重要な要素として位置づけられています。

2. 行司による継承と修練

  • 習得の場: 行司は日本相撲協会の職員であると同時に各相撲部屋に所属しており、部屋の親方や先輩行司から相撲文字の書き方を直接叩き込まれます。
  • 日常の研鑽: 本場所がない時期であっても、行司は相撲部屋などで日々の練習を欠かしません。
  • 事務のエリート: 行司は土俵上での審判以外に、番付表の執筆や取組の記録といった事務全般を支える「裏方のエリート」という側面を持っており、相撲文字の習得はその象徴的なスキルの一つです。

3. 補足情報

以下の情報は、一般的に知られている「根岸流」の補足です。

  • 書体の由来: 江戸時代、番付の筆耕を担っていた「根岸家」の名に由来します。
  • 縁起を担ぐデザイン: 相撲文字は、隙間を極力少なくして書かれます。これは「客席に隙間がない(満員御礼)」「力士が隙を作らない」といった縁起を担いでいると言われています。
  • かすれの少なさ: 墨をたっぷりと含ませ、力強く一気に書くことで、勢いと団結を表すとされています。

行司が真剣な表情で書く番付表は、まさに職人技の結晶です。次に番付表をご覧になる際は、その一文字一文字に込められた行司の修行の成果にも注目してみてください。

  • すべて手書き: 独特の力強い書体「相撲文字(根岸流)」を用い、巨大な番付表をすべて手書きで書き上げます。
  • 高い技術の証明: 執筆には非常に高い技術が必要とされ、行司にとって重要な専門技能の一つです。
  • 準備段階: 取組編成会議(翌日の取組を決める会議)に書記として同席し、そこで決定された事項などを管理する役割も行司が担っています。

資料外の情報(一般的な執筆期間)

資料には記載されていませんが、一般的に番付表の執筆には以下のような時間がかかるとされています。

  • 期間: 1枚の「元本(書き出し)」を書き上げるのに、通常1週間から10日ほどかかると言われています。
  • 作業の進め方: 番付編成会議で新しい番付が決定された直後から、数名の行司(番付書き担当)が交代しながら、あるいは分担して書き進めます。
  • 精密な作業: 誤字は許されず、また力士の数が多い下位の段になるほど文字を非常に小さく、かつ隙間なく書かなければならないため、極めて集中力を要する作業となります。

資料にある通り、行司は本場所中だけでなく、こうした「裏方のエリートビジネスマン」としての事務作業や技術習得に多くの時間を費やしています。

土俵祭りと行事

本場所の前日に行われる「土俵祭(どひょうまつり)」において、行司は非常に重要な役割を担っています。

ソースによると、土俵祭での行司の役割は以下の通りです。

  • 祭主を務める: 行司は本場所前日に行われる「土俵祭」において、儀式の進行を司る祭主(さいしゅ)を務めます。
  • 神々を土俵に迎える: 相撲はもともと五穀豊穣を占う神事であり、行司は神々を土俵に迎えるという大役を担っています。

大相撲における行司の役割は、土俵上での勝負判定(レフェリー)だけでなく、このような「神事・式典の進行」も大きな柱の一つとなっています。

裏方としての仕事

  • 主な担当業務: 行司は土俵上での判定以外に、「東、○○山~」といった力士の紹介や、勝負が決まった後の「決まり手」の発表を場内放送(アナウンス)を通じて行います。
  • 担当する階級: これらのアナウンス業務は、主に**若手行司(幕下格以下)**が担当します。彼らは午前8時半頃から始まる序ノ口の取組から会場に入り、交代で土俵に上がる合間にアナウンスの仕事もこなしています。
  • 交代制での実施: 場内アナウンスや決まり手の発表は、特定の誰かが固定で行うのではなく、交代制で行われています。
  • 「裏方のエリート」としての役割: 行司は、場内アナウンスや番付表の執筆、取組の記録管理など、日本相撲協会の事務全般を支える「裏方のエリートビジネスマン」という側面を持っており、アナウンスもその重要な業務の一つです。

このように、若手の行司は朝早くから会場に入り、土俵上での修行と並行して、場内放送という形で本場所の円滑な進行を支えています。

行事の掛け声

行司の掛け声にはどのような種類がありますか?

行司が土俵上で行う掛け声には、大きく分けて「仕切り(立ち合い前)の際」「取組中」の2つの場面で使われる種類があります。

1. 仕切り(立ち合い前)の掛け声

力士が立ち合いの呼吸を合わせる際、行司は以下のような言葉をかけて、力士の動作を促したり呼吸を整えさせたりします。

  • 「構えて(かまえて)」
  • 「見合って(みあって)」

これらは「仕切りの命じ手」と呼ばれ、力士の呼吸(仕切り)を合わせるために重要な役割を果たします。

2. 取組中の掛け声

取組が始まると、行司は大きな声で力士を鼓舞し、勝負の進行を司ります。

  • 「はっきよい」
  • 「のこった」

例えば、歴代の名行司として知られる27代 木村庄之助は、会場の隅々まで響き渡る高音で「はっきよい、のこった!」と声をかけ、絶大な人気を誇りました。

これらの掛け声は、単に試合を進行させるだけでなく、神事としての相撲において「仕切り役」としての威厳を示す大切な要素となっています。次に観戦される際は、行司がどのようなタイミングでこれらの声をかけ、力士の呼吸を合わせているかにも注目してみてください。

物言いがついた時の行司の振る舞い

物言いがついた際、行司は判定を下した当事者として、土俵上で堂々と振る舞わなければならないとされています。

具体的な振る舞いやその背景にある精神については、以下の通りです。

  • 判定の当事者としての威厳: 土俵下の勝負審判(親方衆)から「物言い」がつくと、審判たちが土俵に上がって協議(審判委員会議)を行いますが、行司はその間、自分が下した軍配に責任を持つ立場として、毅然とした態度で土俵上に留まります。
  • 不退転の覚悟(帯刀): 特に最高位の木村庄之助などの立行司は、装束の腰に短刀(帯刀)を差しています。これは単なる装飾ではなく、「もし判定を誤るようなことがあれば、この短刀で切腹して責任を取る」という極めて重い覚悟と責任を示す伝統的なシンボルです。
  • 「神事」を司る者としての責任: 行司は勝負の判定だけでなく、神々を土俵に迎える「土俵祭」の祭主を務めるなど、神事の進行を司る重要な役割を担っています。そのため、物言いがつくような緊迫した場面においても、その一挙手一投足に重みを持ち、神聖な土俵の秩序を守る振る舞いが求められます。

このように、物言いがついた時の行司の姿には、単なる審判員としての職務を超えた、命懸けで公平な判定に臨むという大相撲の伝統的な精神が投影されています。

階級と役割分担

1. 若手行司(幕下格以下)の一心

若手行司は、場所中最も早くから活動を始めます。

  • 早朝からの勤務: 朝いちばんに国技館(会場)に入ります
  • 土俵での取組: 午前8時半頃から始まる「序ノ口」の取組から土俵に上がり、交代で幕下以下の取組を裁きます。
  • 場内アナウンス: 土俵に上がる合間に、「東、○○山~」といった力士の紹介や決まり手の発表などの場内放送業務も兼務します。

2. ベテラン行司(十両格以上〜最高位)の一日

十両格以上のベテランになると、出勤時間は遅くなりますが、より高い集中力が求められる取組を裁きます。

  • 午後からの出勤: 午後、自分の担当する取組(十両や幕内)が始まる少し前に出勤します。
  • 精神統一と本番: 会場に入ると装束に着替え、精神を統一して出番に備えます。
  • 結びの一番: 最高位の木村庄之助や式守伊之助(立行司)が土俵に上がるのは、夕方5時すぎの結び近くとなります。

3. 本場所がない時期や巡業での違い

本場所がない時期や地方巡業においても、それぞれの役割があります。

  • 日常の修行: 階級に関わらず相撲部屋に所属しており、相撲文字(根岸流)の練習や事務仕事、部屋のマネジメント業務(買い出しや指導の手伝いなど)を行います。
  • 地方巡業の「先発隊」: 巡業中、行司は「先発隊」として力士たちより先に現地入りします。会場の設営、宿舎の手配、チケット管理、経理業務といった「裏方のエリートビジネスマン」としての多忙な業務をこなします。

このように、若手は朝から会場全体の運営を支え、ベテランは午後の主要な取組に向けて心身を整えるという、階級に応じた役割分担が明確になされています。

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