核融合発電は温暖化防止の決め手「核融合」をやさしく説明します

最近、新聞・マスコミで話題となる「核融合」。夢のエネルギーと言われ、地球温暖化を防止する決め手とも言われています。

今回は、その技術の内容、従来の原子力発電との違い、今後の見通しなどを、日本と欧米のスタンスを比較しながらレポートします。

目次

核融合とは? 現在の原発(核分裂反応)との違いは

核融合と核分裂は、エネルギーを生成する際の異なるプロセスですが、それぞれ異なる特徴、メリット、デメリットを持っています。以下にそれらの違いや人体への影響について説明します。


1)基本的なプロセスの違い
<核融合>
– 核融合は、軽い原子核(主に水素の同位体である重水素と三重水素)が高温・高圧下で接近し、融合してより重い原子核(ヘリウムなど)を形成するプロセス。この過程で莫大なエネルギーが放出される。
– 例: 水素同士が融合してヘリウムを形成し、エネルギーを放出する反応。

核融合反応の過程では、二酸化炭素(CO2)を発生させない

われわれが恩恵を蒙っている太陽は、一秒間に広島型原発5兆個分と言う、超々巨大なエネルギーを核融合で生じています

おさるちゃん

「核融合」は地上の太陽☀️
とも言われてる


<核分裂>
– 核分裂は、重い原子核(例えばウラン-235やプルトニウム-239)が中性子を吸収し、その結果、2つ以上の軽い原子核に分裂してエネルギーと中性子を放出するプロセス。
– 例: ウラン-235が中性子を吸収して分裂し、バリウムとクリプトンなどの軽い原子核を生成する反応。


2)エネルギーの放出量
<核融合>
– 核融合反応は、質量欠損(反応前後の質量の違い)をエネルギーに変換することで、大量のエネルギーを放出する」。例えば、1 kgの水素を使用した場合、そのエネルギーは約24,000 MWhにも相当します。

なぜだろう

水素がわずか1gで、タンクローリー1台分
石油8トン分のエネルギーを放出!


<核分裂>
– 核分裂でも高いエネルギーが放出されますが、核融合に比べるとエネルギー効率は低い
。ウラン-235の核分裂1回あたりのエネルギー放出は約200 MeV(メガ電子ボルト)であり、多くの核分裂反応を通じてエネルギーが得られる。


3)副産物と放射性廃棄物
<核融合>
– 核融合の反応生成物は主にヘリウムであり、放射性廃棄物は比較的少なく、長寿命の放射性物質を生じにくい。反応で使用される重水素と三重水素も地球上に豊富に存在している。

重水素・三重水素は
海水から採れるから無尽蔵だ


<核分裂>
– 核分裂は、放射性廃棄物(長寿命の放射性同位体を含む)を大量に生成します。これには廃棄物の管理や処理が重視され、長期にわたる安全対策が必要です。

4)安全性とリスク
<核融合>
– 核融合は、自己制御的な性質を持ち、反応条件(温度や圧力)が崩れると自然に停止するため、事故が発生しにくいとされている。高温プラズマを用いるため、システムが破損した場合でも周囲には危険が及びにくい。

<核分裂>
– 核分裂は、チェーンリアクション(連鎖反応)の特性があり、制御に失敗するとメルトダウン(炉心溶融)等の重大事故を引き起こす可能性がある。福島第一原発事故などがその例です。


5)人体への影響
<核融合>
– 核融合反応自体は、放射線を発生させるものの、主にヘリウムのような非放射性物質を生成します。反応装置周辺の中性子放射線は放射線障害のリスクがあるため、適切な遮蔽や安全管理が必要。しかし、核融合が実用化された場合、従来の核分裂よりも人体へのリスクは少ないと考えられている。
<核分裂>
– 核分裂に伴う放射性物質(ストロンチウム-90やセシウム-137など)は、人体に深刻な影響を及ぼします。短期的には急性放射線障害、長期的にはがんなどの健康被害が懸念される。核事故が発生した場合、広範囲な避難が必要となります。

以上のように、核融合で生成されるエネルギーは、現在の原発に比べ、エネルギー効率・安全面・ごみ処理など、ほとんどの面で優れていることが一目瞭然です。

核のゴミ問題が解決するのが
もっとも大きいメリットかも

技術開発 日本と欧米の比較

核融合技術は、持続可能なエネルギー源として注目されています。日本と海外(特に欧米)における進捗状況の比較を以下の5つの項目に分けて紹介します。

研究機関とプロジェクト
<日本>
– 日本では、国立研究開発法人「核融合科学研究所」や「筑波大学」、さらには国際共同プロジェクトである「ITER」に参加している。日本のプロジェクトは、JT-60SA(次世代核融合実験炉)などがあり、特にJT-60SAは、国際共同プロジェクトとして新しい技術の実装に力を入れています。

<欧米>
– 欧米では、特にアメリカの「ローレンス・リバモア国立研究所」(LLNL)やフランスのITERプロジェクトが中心。ITERは、国際的な協力によって進行しており、世界各国からの参加がある大規模なプロジェクトです。アメリカでは「National Ignition Facility」(NIF)が高エネルギー密度物理学の研究(レーザー核融合)を進めている。

ITER(国際熱核融合実験炉 International Thermonuclear Experimental Reactor) ; 米国・日本・EU・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加 実験炉完成が先端部品の調整遅れで2025年から35年に先送りになっている

技術アプローチ
<日本>
– 日本では、トカマク方式の核融合炉が主流であり、これに対する研究が進められている。特に、JT-60SAはトカマク技術の改良と高性能化を目指しています。

トカマク方式とは、コイルで発生したドーナツ型の磁場の中に、超々高温・高圧のプラズマ(固体液体気体プラズマ)を閉じ込めて、核融合を起こさせる方式 核融合技術の中で最も一般的な方法


<欧米>
– 欧米でもトカマク対応が一般的ですが、アメリカや欧州連合は、より多様なアプローチ(たとえば、ステラレーター方式やその他の新しい概念)を模索している点が特徴。特に、ドイツのWendelstein 7-Xは、トカマク方式(変流器の原理に基く電流方式)と異なるステラレーター技術(らせん状コイル電流方式)に基づいた核融合実験炉です。

商業化の目標
<日本>
– 日本は、2050年頃に商業用核融合炉の実現を目指しているが、技術的な課題への取り組みは進行中です。また、政策的にも核融合の商業化に向けての支援が求められています。
<欧米>
– 欧米の多くの研究機関も商業化を2030年代から2040年代にかけて目指している。特に、アメリカでは私企業が核融合技術の商業化に向けたイニシアティブを取っており、競争が激化している。

米国のスタートアップ企業「CFS」(コモンウェルス・フージョン・システムズ マサチューセッツ州)が、2027年稼働目標を発表 建設中プラントを公開した 同社は日本と同じ「トカマク方式」を採用

資金と投資
<日本>
– 日本の核融合研究は、主に政府の資金によって支えられているが、近年は民間企業の参加も増えてきている。政府の科学技術への投資が比較的重視されています。
<欧米>
民間企業による投資が活発であり、多くのスタートアップ企業が核融合技術の商業化を目指して競争している。また、政府からの研究資金も支給されているが、民間の関与が多いのが特徴です。

国際協力と規制
<日本>
– 日本はITERプロジェクトに積極的に参加しており、国際的な協力によって技術の進展を図っている。ただし、特定国との技術共有・連携には慎重です。
<欧米>
– 欧米では国際共同研究が進んでおり、特にITERの枠組みを通じて他国との緊密な協力が行われている。また、核融合技術の国際的な規制や基準についても活発に議論されています。

社会的関心と公共理解
<日本>
– 核融合技術への関心は高まっていますが、一般市民への理解と支持を得るための広報活動が求められている。エネルギー危機や気候変動への対応策として認識されることが重要です。
<欧米>
– 欧米の多くの国では、エネルギー問題に対する国民の関心が高く、核融合に対する理解も進んでいる。特に、エネルギー自給率向上や温暖化対策としての重要性が強調されています。

まとめ

核融合と核分裂の違いは、反応のメカニズムからエネルギーの生成、廃棄物の扱いや人体への影響に至るまで多岐にわたります。

核融合は将来的なエネルギー源として期待されているが、商業化に向けた技術的課題が残っています。一方、核分裂は既存のインフラが整っているが、放射性廃棄物や安全性問題が依然として重要な課題です。

日本と欧米では、核融合技術の研究と開発が多様なアプローチで行われている。国際的な協力や民間投資の規模、技術の商業化の目標において違いがあるが、共通して持続可能なエネルギー源としての期待が寄せられています。

これからの進展により、核融合技術は将来のエネルギー問題解決の一助となることが期待されます。

AIの発達に伴う電力需要の急激な増加、発展途上国の需要の急拡大など、人類は、これからも膨大な量の、電力と言う形のエネルギーを必要とします。

化石燃料に頼る電力は、資源に限界があると同時に、地球温暖化の加速を招き、クリーンエネルギーだけでは、到底、将来の急拡大する電力需要に対応できないでしょう。

一方、従来の原子力発電も、核のゴミ処理の問題、安全性の問題などが、これからも深刻な社会的問題として払拭されません。

このような、現実的問題を考えると、大げさな表現になりますが、核融合エネルギーなくして地球温暖化対策なし、と言えるのでは今後とも人類の大きな課題として、日本の産官挙げての「核融合発電」の開発への、取り組みを願ってやみません。

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